この記事ではディスクブレーキの構造について解説していきます。
オーバーホールや点検を考えている方は是非読み進めてみてください。
ディスクブレーキの構成
ディスクブレーキは主に
- ブレーキフルード
- マスターシリンダー
- ブレーキホース
- キャリパー
- ピストン
- ブレーキパッド
- ブレーキローター(ディスク)
から構成されています。
ブレーキレバーを握るとマスターシリンダーの中でブレーキフルードが押され、油圧ホースを通りキャリパーに組み込まれているピストンを押し出します。
その押し出す力によってパッドでディスクを押さえつけ制動力を得るという仕組みです。
順に紹介していきますので是非最後までお付き合いください。
ブレーキフルード
ブレーキフルードはブレーキを握った時に発生した力をピストンに伝える作動油です。
ブレーキフルードは沸点が高く吸湿性があり、劣化とともに沸点が低くなるので2~4年に一度は交換しましょう。
劣化したまま使っていると気泡が発生しペーパーロック現象と呼ばれるブレーキが効きにくい、効かない等の症状がでます。
いわゆるエア嚙みです。
エア嚙みが起こるとブレーキの油圧をエアが吸収してしまうためブレーキの効きが悪くなります。
さらに劣化が進むと結晶化しピストンの動きを悪くしたり、シール部分に不具合がでてきます。
またブレーキフルードは塗装面を侵すので扱いには注意してください。
塗装面に付いてしまった場合はすぐ水で洗い流しましょう。
ブレーキフルードの交換時期は2~4年に一度
エア抜き必須
塗装面に付けない
マスターシリンダー
マスターシリンダーには通常の横押し型と縦押しのラジアル式があります。
ブレーキの制動力としては大差はありませんがブレーキのコントロール性、タッチ感においてラジアル式が優れています。
構造上通常の横押し式ではブレーキを引く力を横に変換しなければならないのでロスが生まれます。
対してラジアル式では引く力をそのままダイレクトに伝えられるので横押し式と比較して繊細な操作が可能になります。
またブレーキはてこの原理を使っているため、支点と力点の距離が稼げるラジアル式は横押し式より少ない力でブレーキをコントロールできます。
ブレーキの操作性やその繊細さから、レース等ではラジアル式が主流になっています。
そしてマスターシリンダーの中にはピストン、ゴム製パッキン、バネ等が入っており、ブレーキフルードの結晶化やゴムの劣化によって不具合がでます。
ブレーキフルードの結晶化ではピストンの固着でブレーキが効かない、戻りが悪く効きっぱなし等があり、パッキンの劣化ではブレーキフルードの漏れで圧がかけられずブレーキが効かない等の症状がでます。
フルードの結晶は蓄積されていくのでたまに清掃してあげるといいと思います。
横押し式はウニュ。 ラジアル式はカチッ。
マスター内部の状態に注意
ブレーキホース
ブレーキホースはマスターシリンダーからキャリパーまでのブレーキフルードの通り道です。
ブレーキホースはゴム製が主流で経年劣化によるひび割れ、膨張等があるため10万キロ、10年を目安に交換するといいでしょう。
サービスマニュアルでは5万キロ、4~5年に1度等とあったりしますがよほどの悪環境でなければ大丈夫です。
またブレーキホースのカスタムもおすすめです。
メッシュ系のホースは耐久性に優れ長く使えるうえに、ゴム系のホースに比べ膨張が少なく、油圧の逃げを少なくできるのでブレーキのレスポンスを良くすることができます。
ですがメッシュホースにもデメリットがあり、柔軟性に欠けるのでねじれや屈折に弱くなります。
ねじれやサスストロークの大きい車両では寿命が短くなることがあるので注意が必要です。
ブレーキレスポンスを上げたい方はぜひ採用してみてください。
ブレーキホースが原因で不具合がでる理由としては接合部パッキンの不良やホースの劣化が大半なので目視で亀裂や漏れが見つかったらすぐに対処しましょう。
亀裂、膨張に注意。
レスポンスを上げるならメッシュホース。
キャリパー
キャリパーはブレーキローターを挟み込み、ブレーキを効かせるための重要な部品です。
キャリパーの中にはピストンやブレーキパッドが入っており、ブレーキレバーを握ることによってピストンが押し出され、パッドがローターを挟み込みブレーキが効きます。
そしてキャリパーには大きく分けて片押しと対向(両押し)の2種類があります。
両方とも制動力に大差はありませんがコントロール性において対向キャリパーが優れています。
片押しキャリパーでは片側からピストンが出てブレーキパッドを押し出し、ピストンと反対側のブレーキパッドはキャリパー本体が動くことによって押さえつけています。
このことから浮動式、フローティング式等とも呼ばれています。
片押しキャリパーの動き方としては
ピストンが押し出される。
↓
パッドがブレーキローターに当たる。
↓
キャリパーが動き反対側のパッドも当たる。
↓
ブレーキが効く。
という流れになります。
対して対抗キャリパー(両押し)では両方からピストン→ブレーキパッドで押さえつけるためロスが少なくなるのでコントロール性が良くなります。
また浮動式と比べキャリパーをしっかり固定できるため剛性を保つことができます。
対向キャリパーのデメリットは部品点数が多くなるため重くなるところですが、アルミ等材質を変えることによって抑えられています。
重さというデメリットを抱えながらもスポーツカー等、サーキットでは対向式が主流になっていることから操作性や安定性において対向キャリパーが優れていることが分かると思います。
そしてキャリパーの固定方法ですがこれも2種類あります。
一般に普及しているアキシャルマウントと、レース車両等で使われるラジアルマウントです。
結論からいうとアキシャルマウントに比べラジアルマウントのほうが捻じれが少なく剛性が上がります。
構造上アキシャルマウントではキャリパーをタイヤに対して垂直に固定するので、回転するタイヤを止めようとすると捻じれが発生します。
その捻じれがブレーキの力を吸収してしまうためロスが生じます。
それを解消しようと開発されたのがラジアルマウントです。
タイヤに対して同じ方向で放射線状にキャリパーを固定することで捻じれを最小限に抑えられるようになっています。
ブレーキをかける力が大きくなればなるほどラジアルマウントの構造が生きてくるのでレースシーン等で広く採用されています。
片押し、対向共に制動力に大差なし。
コントロール性は対向キャリパー。
キャリパー固定はラジアルマウントにすると剛性アップ。
ピストン
ピストンはブレーキを握ることによって押されたブレーキフルードを受け止め、パッドへと伝達する役割を持っています。
そこにはパスカルの原理が働いており、マスターシリンダーのピストン径とキャリパーピストン径の比率によって力が倍増されるようになっています。
なのでキャリパーピストン径を大きくしたり、2ポットや4ポット等とピストンの数を増やせば少ない力でより強力な制動力を得られます。
そしてピストンの不具合は固着や引き摺りが多く、錆やフルードの結晶化、シールの劣化によって発生します。
ピストンが入るキャリパーには異物の混入を防ぐダストシールと、ブレーキフルードが漏れないようにするオイルシールがあります。
オイルシールには押し出たピストンを戻す役割も担っているので、劣化や異物の嚙み込みはピストンの戻りを阻害するので引き摺りを起こしやすくなります。
固着や引き摺りの症状が出たらピストン、シールの確認をしてみてください。
マスターとキャリパーのピストン径の比率を変えると制動力UP。
不具合が出たらシール、ピストン当たり面の確認。
ブレーキパッド
ブレーキパッドはブレーキローター(ディスク)を挟み込み摩擦によってタイヤを止める非常に負荷のかかる部品です。
新品では10mmぐらいのものが日々の走行でどんどん削られていきます。
パッド残量が3mm前後になったら交換しましょう。
ブレーキパッドは何種類もの材料を固めて作られており、大きく分けてレジン(樹脂系)とメタル(金属系)があります。
制動力 | 耐久性 | 耐熱性 | コスト | ローター摩耗 | |
レジン(樹脂) | |||||
メタル(金属) |
レジンは樹脂を焼き固めているので熱に弱く、負荷のかかるブレーキ操作をすると高温になりフェードというブレーキが効きにくくなる現象が起こるので注意が必要です。
メタルでは金属を焼き固めているので耐熱性に問題はありませんが、ブレーキローターの摩耗が早くなるうえにメタルの特性からブレーキ鳴きも出やすくなります。
ブレーキの感覚としてレジンは柔らかいタッチ感、メタルはガツッと効くような感じでロックしやすいです。
一般の車両ではレジン、サーキット等ではメタルが主流になっています。
またレジンに金属の含有率を多くしたセミメタルというのもあり、スポーツ走行よりの車両では広く使われているので是非チェックしてみて下さい。
交換目安は3mm前後。
パッド選びは一長一短、走行にあった選択を。
ブレーキローター(ディスク)
ブレーキローターはタイヤと共に回るディスクで主に一枚モノのソリッドとリジット(固定式)、フローティング(浮動式)があります。
常に酷使される部分で消耗品なので摩耗や段付きが出てきたら早めに交換してあげて下さい。
では順に紹介していきます。
ソリッドは一枚のディスクでできているので頑丈で安価ですが、放熱性に弱く歪みや変形が出やすいので高温になりにくいリアブレーキでよく使われます。
歪みや変形が起こるとキャリパーとの当たりにムラがでるので操作性や制動力に影響がでます。
リジットはソリッドに放熱性を上げたもので、マウント部とローター部の材質を変えることができるのでソリッドに比べ軽くなっており、一般に広く使われています。
ですが固定式のため歪みや膨張に弱く、一度変形してしまうとブレーキの操作性を大きく損ないます。
それを解決したのがフローティング式で、フローティングピンによってアウター(外周部分)が動くようになっており、放熱性に優れ熱による膨張を吸収できるので歪みがでにくくなっています。
ブレーキ性能は抜群ですが構造上フローティングピンが弱いので定期的な点検が欠かせないのとアウター部分が動くので静粛性は低いです。
フローティング式でもカチャカチャ動くフルフローティング式とピンの摩耗を抑えたあまり動かないセミフローティング式があり、前者はサーキット走行、後者は一般のスポーツ車両等でよく使われています。
段付き、摩耗は早めの交換。
ブレーキローターはソリッド、リジット、フローティングがある。
以上です。
最後まで読んで頂きありがとうございました。